2019年10月、ついに保育園・幼稚園の無償化制度がスタートしました。これは、小中学校(義務教育)の無償化以来、約70ぶりの大改革です。
大きな変化だけあって、無償化のメリット・デメリットに関する議論はあちこちで聞かれます。これは小さな子どもを持つ家庭だけでなく、保育士の働き方や保育園・幼稚園の在り方にも深く関わるテーマです。
そこで今回は、教育無償化が保育士・保育施設に与える影響や変化について、改めて解説していきます。
「教育無償化」とは、幼児教育・私立高校・高等教育(大学・専門学校など)といった教育全体を対象にした福祉制度のこと。2019年10月スタートした「幼児教育無償化」も、その中の一つです。
今回の「幼児教育無償化」では、保育園(保育所)、幼稚園、認定こども園などの利用料の一部が無償となりました。
無償化の対象となるのは、保育園(保育所)、幼稚園、認定こども園など。3歳〜5歳児クラスの全ての子どもと、0歳〜2歳児クラスのうち住民税非課税世帯の子どもについて、基本的な施設利用料(保育料)が無料となります。
施設が私立か公立かといった区別はなく、どちらの施設も対象になります。ただし、認可外幼稚園など、中には対象外となる施設もあるため、やや注意が必要です。
また、状況によっては家庭ごとに書類の提出が求められたり、住んでいる市町村から「保育の必要性の認定」を受ける必要があったりするケースもあります。
無償化される金額には月額上限などが定められている場合もあります。「うちはどのくらい恩恵を受けられるの?」といった詳細は、内閣府のポータルサイトから確認できます。
保育士も、保護者から質問を受ける機会があるかもしれません。慌てず説明できるよう、ある程度の基礎知識を身に着けておくと安心です。
「無償化」というと、つい良い面ばかりを期待してしまうのが人情です。もちろん今回の無償化には良い面やメリットもたくさんありますが、反面、問題や課題も表面化しつつあります。
ニュース等でも話題になっていますが、今回の無償化で「かえって出費が増えてしまった」と語る保護者も存在します。
というのも、今回の制度で無料になったのは基本的な保育料のみ。時間外保育費、送迎費、食材料費(給食費など)、行事参加費、入園料、制服代などは保護者の実費負担となります。
ちょっと複雑なこの仕組みにより、今まで園や自治体が負担していた費用が保護者に実費請求されるなどの「逆転現象」も発生しています。これは今後解決されるべき、大きな課題と言えるでしょう。
一方で、保育の現場からも新たな不安が寄せられています。保育士の多くが懸念しているのは、労働時間や業務量の増加、そして、それにともなう保育の質の低下です。
そもそも日本では、大幅な「保育士不足」が問題になっています。現状すでに人手が足りず、現場で働く保育士たちは長時間労働や不充分な職場環境に悲鳴をあげている状態です。
保育料が無償化されたことで、「無料ならば」と新たに入園を希望する子ども・保護者もたくさんいるでしょう。でも肝心の保育士が足りないままでは、ひとりひとりにかかる責任や負担は大きくなっていくばかりです。
あまりにも負担が大きくなれば、退職せざるを得ない人もまた増えてしまいます。保育士不足に拍車がかかり、また負担が増えていく......。この悪循環を止めるには、教育費の無償化だけでなく、やはり保育士不足を解消するための施策が絶対不可欠と言えるでしょう。
だからといって、無償化にはデメリットしかないのかと言えば、決してそうではありません。
教育無償化により保育士の人手がさらに必要となれば、保育園としては「より多くの優秀な人材を集めたい」と考えることでしょう。
どんな業界でもそうですが、人材の獲得競争になれば、働く側の待遇や給与は改善されていく傾向があります。「ぜひうちに来てほしい」と、企業がこぞって好条件を出すためです。
現役の保育士、そして今は働いていないけれど免許を持っている潜在保育士の皆さんは、今後より良い条件で働くチャンスが増えていく可能性があります。
これを機に、現在勤務している園の動向をしっかり見極めるのも一手です。職場環境の改善を求めたり、新たな環境を求めて転職のリサーチを始めたりする保育士も増えるでしょう。
今回の保育無償化が、保育士の現状を改めて見つめ直すきっかけにできれば、保育現場の未来を切り開く活路となるかもしれません。
2019年10月、ついに保育園・幼稚園の無償化制度がスタートしました。これは、小中学校(義務教育)の無償化以来、約70ぶりの大改革です。
大きな変化だけあって、無償化のメリット・デメリットに関する議論はあちこちで聞かれます。これは小さな子どもを持つ家庭だけでなく、保育士の働き方や保育園・幼稚園の在り方にも深く関わるテーマです。
そこで今回は、教育無償化が保育士・保育施設に与える影響や変化について、改めて解説していきます。
「教育無償化」とは、幼児教育・私立高校・高等教育(大学・専門学校など)といった教育全体を対象にした福祉制度のこと。2019年10月スタートした「幼児教育無償化」も、その中の一つです。
今回の「幼児教育無償化」では、保育園(保育所)、幼稚園、認定こども園などの利用料の一部が無償となりました。
無償化の対象となるのは、保育園(保育所)、幼稚園、認定こども園など。3歳〜5歳児クラスの全ての子どもと、0歳〜2歳児クラスのうち住民税非課税世帯の子どもについて、基本的な施設利用料(保育料)が無料となります。
施設が私立か公立かといった区別はなく、どちらの施設も対象になります。ただし、認可外幼稚園など、中には対象外となる施設もあるため、やや注意が必要です。
また、状況によっては家庭ごとに書類の提出が求められたり、住んでいる市町村から「保育の必要性の認定」を受ける必要があったりするケースもあります。
無償化される金額には月額上限などが定められている場合もあります。「うちはどのくらい恩恵を受けられるの?」といった詳細は、内閣府のポータルサイトから確認できます。
保育士も、保護者から質問を受ける機会があるかもしれません。慌てず説明できるよう、ある程度の基礎知識を身に着けておくと安心です。
「無償化」というと、つい良い面ばかりを期待してしまうのが人情です。もちろん今回の無償化には良い面やメリットもたくさんありますが、反面、問題や課題も表面化しつつあります。
ニュース等でも話題になっていますが、今回の無償化で「かえって出費が増えてしまった」と語る保護者も存在します。
というのも、今回の制度で無料になったのは基本的な保育料のみ。時間外保育費、送迎費、食材料費(給食費など)、行事参加費、入園料、制服代などは保護者の実費負担となります。
ちょっと複雑なこの仕組みにより、今まで園や自治体が負担していた費用が保護者に実費請求されるなどの「逆転現象」も発生しています。これは今後解決されるべき、大きな課題と言えるでしょう。
一方で、保育の現場からも新たな不安が寄せられています。保育士の多くが懸念しているのは、労働時間や業務量の増加、そして、それにともなう保育の質の低下です。
そもそも日本では、大幅な「保育士不足」が問題になっています。現状すでに人手が足りず、現場で働く保育士たちは長時間労働や不充分な職場環境に悲鳴をあげている状態です。
保育料が無償化されたことで、「無料ならば」と新たに入園を希望する子ども・保護者もたくさんいるでしょう。でも肝心の保育士が足りないままでは、ひとりひとりにかかる責任や負担は大きくなっていくばかりです。
あまりにも負担が大きくなれば、退職せざるを得ない人もまた増えてしまいます。保育士不足に拍車がかかり、また負担が増えていく......。この悪循環を止めるには、教育費の無償化だけでなく、やはり保育士不足を解消するための施策が絶対不可欠と言えるでしょう。
だからといって、無償化にはデメリットしかないのかと言えば、決してそうではありません。
教育無償化により保育士の人手がさらに必要となれば、保育園としては「より多くの優秀な人材を集めたい」と考えることでしょう。
どんな業界でもそうですが、人材の獲得競争になれば、働く側の待遇や給与は改善されていく傾向があります。「ぜひうちに来てほしい」と、企業がこぞって好条件を出すためです。
現役の保育士、そして今は働いていないけれど免許を持っている潜在保育士の皆さんは、今後より良い条件で働くチャンスが増えていく可能性があります。
これを機に、現在勤務している園の動向をしっかり見極めるのも一手です。職場環境の改善を求めたり、新たな環境を求めて転職のリサーチを始めたりする保育士も増えるでしょう。
今回の保育無償化が、保育士の現状を改めて見つめ直すきっかけにできれば、保育現場の未来を切り開く活路となるかもしれません。