近年、日本の子どもの運動能力の低下が、大きな問題となっています。
現代の子どもたちは、身長が伸びて体格はよくなっているものの、「走る、跳ぶ、投げる」といった体を動かす基礎能力がぐっと下がっているのです。
子どもの運動能力低下問題は、なぜ起きているのでしょうか? また、保育の現場では、この問題を改善するためにどのようなことを意識すればよいのでしょうか?
今回は、幼児の運動能力低下問題について、分かりやすく解説します。
幼児の運動能力低下は今、全国の保育現場で注目されている問題です。
親世代が子どもだった1970〜80年代に比べ、現代の子どもは「50m走」「立ち幅跳び」「ソフトボール投げ」といった種目の平均値がぐっと低くなっています。
また、小中学校や高校では、生活習慣病にかかる子どもが増加中。さらに、「肥満」「痩せ」という両極端な健康問題を抱える子どもも、それぞれに増加しています。
加えて、コロナウイルスの影響により気軽な外出が困難な状況が続き、基礎体力のさらなる低下が懸念されているのが、2020年の現状です。
幼児の運動能力を測る検査は、各自治体やNPO団体などにより行われています。とくに知名度が高いのは、幼児運動能力研究会による「MKS幼児運動能力検査」です。
この検査は、幼児を対象とした運動能力検査では日本で唯一「全国基準」を持つもので、北海道から沖縄の幼稚園・保育所に通う4,5,6歳児(約12,000名)の測定値を基に作成されています。
検査は、「25m走(または往復走)」「立ち幅跳び」「ボール投げ」「体支持持続時間」「両足連続跳び越し」「捕球」の6種目で行われ、文部科学省の調査研究にも用いられています。
これらの能力検査をもとにした研究では、「幼児期に体力や運動能力が低いと、将来にわたり病気や怪我をしやすくなる」という大きなリスクが指摘されています。
また、幼児期に多くの運動を経験した人のほうが、大人になっても自発的に体を動かしやすくなり、精神的にも安定するという研究データもあります。
保育の現場でも、子どもたちの運動体験を増やす工夫が急務であると言えるでしょう。
研究によれば、幼児の運動能力低下には、大人たちの生活の変化が深く関係しています。
日本では現在、都市化が進み、子どもたちが外遊びするために必要な3つの「間」が急減しています。
3つの「間」とは、一緒に遊ぶ「仲間」、自由になる「時間」、そして元気に走り回っても差し支えのない、物理的な「空間」のことです。
現代の子どもたちは塾や習い事で忙しく、また、事故や犯罪への懸念から、外で遊ぶことがなかなかできなくなっています。
最近は、ゲームをはじめ、家の中で遊ぶ子どものためのツールが発達し、体をほとんど動かさなくても友達との時間を楽しめるようになりました。
また、大人にとっても便利な家電が続々と登場しており、子どもたちが家事の手伝いで体を動かす機会もぐっと減っています。
共働きの家庭が一般的になり、両親ともに夜遅くまで就寝できないケースも増えています。
親の不規則な生活スタイルは、子どもにも影響を与えます。早寝早起きのリズムが崩れ、夜ふかしや寝不足が続くと、成長ホルモンの分泌が減って筋肉の発達を妨げてしまいます。
*
こうした原因が重なることで、幼児の運動能力が全体的に低下していると思われます。
文部科学省「幼児期運動指針」(平成24年3月)によれば、幼児期(3〜6歳)は、生涯にわたって必要となる「多様な動き」の基礎を獲得する、非常に重要な時期です。
運動にかかわる神経伝達システムは、5〜6歳までに大人の約8割程度にまで発達すると言われています。
つまり、幼児期に「走る、跳ぶ、転がる、ぶら下がる」といった基礎的な動作をどれくらい経験したかによって、その後の人生における運動能力が変わってくる、ということです。
では、この問題の改善に向けて、保育士や保育施設はどんな工夫を心がけたら良いのでしょうか?
日本スポーツ協会による「子どもの身体活動ガイドライン」の中では、子どもに最低限必要とされる身体活動量は「1日60分以上」と定められています。
この「1日60分」というのは、スポーツをする時間だけでなく、体を動かす遊びや階段の上り下り、掃除の手伝いなど、日常生活における活動の全てを含むものです。
この基準に照らし、保育園や幼稚園でも、いろいろな形で体を動かす遊びを取り入れていく工夫を行うのが好ましいでしょう。
たとえば、園庭での遊びや園外への散歩など。また、屋内でもダンスやリトミック、マット運動など、多様な遊びで体を動かすことができます。
子どもたちに運動を促す際には、「楽しみながらできるかどうか」も重要な視点です。というのも、幼児期に「体を動かすことは楽しい」という感覚を経験することで、生涯にわたり運動への抵抗感を減らせるためです。
大切なのは、無理に上達を強いるのではなく、子どもたち一人ひとりの発達に合った運動を取り入れること。
また、運動が苦手な子でも楽しめるように工夫をこらすこと。
そして、大人も一緒に楽しむことです。
生涯にわたり影響を与える「幼児期の運動能力」。低下を防ぐ工夫を、できることから始めていきましょう。
近年、日本の子どもの運動能力の低下が、大きな問題となっています。
現代の子どもたちは、身長が伸びて体格はよくなっているものの、「走る、跳ぶ、投げる」といった体を動かす基礎能力がぐっと下がっているのです。
子どもの運動能力低下問題は、なぜ起きているのでしょうか? また、保育の現場では、この問題を改善するためにどのようなことを意識すればよいのでしょうか?
今回は、幼児の運動能力低下問題について、分かりやすく解説します。
幼児の運動能力低下は今、全国の保育現場で注目されている問題です。
親世代が子どもだった1970〜80年代に比べ、現代の子どもは「50m走」「立ち幅跳び」「ソフトボール投げ」といった種目の平均値がぐっと低くなっています。
また、小中学校や高校では、生活習慣病にかかる子どもが増加中。さらに、「肥満」「痩せ」という両極端な健康問題を抱える子どもも、それぞれに増加しています。
加えて、コロナウイルスの影響により気軽な外出が困難な状況が続き、基礎体力のさらなる低下が懸念されているのが、2020年の現状です。
幼児の運動能力を測る検査は、各自治体やNPO団体などにより行われています。とくに知名度が高いのは、幼児運動能力研究会による「MKS幼児運動能力検査」です。
この検査は、幼児を対象とした運動能力検査では日本で唯一「全国基準」を持つもので、北海道から沖縄の幼稚園・保育所に通う4,5,6歳児(約12,000名)の測定値を基に作成されています。
検査は、「25m走(または往復走)」「立ち幅跳び」「ボール投げ」「体支持持続時間」「両足連続跳び越し」「捕球」の6種目で行われ、文部科学省の調査研究にも用いられています。
これらの能力検査をもとにした研究では、「幼児期に体力や運動能力が低いと、将来にわたり病気や怪我をしやすくなる」という大きなリスクが指摘されています。
また、幼児期に多くの運動を経験した人のほうが、大人になっても自発的に体を動かしやすくなり、精神的にも安定するという研究データもあります。
保育の現場でも、子どもたちの運動体験を増やす工夫が急務であると言えるでしょう。
研究によれば、幼児の運動能力低下には、大人たちの生活の変化が深く関係しています。
日本では現在、都市化が進み、子どもたちが外遊びするために必要な3つの「間」が急減しています。
3つの「間」とは、一緒に遊ぶ「仲間」、自由になる「時間」、そして元気に走り回っても差し支えのない、物理的な「空間」のことです。
現代の子どもたちは塾や習い事で忙しく、また、事故や犯罪への懸念から、外で遊ぶことがなかなかできなくなっています。
最近は、ゲームをはじめ、家の中で遊ぶ子どものためのツールが発達し、体をほとんど動かさなくても友達との時間を楽しめるようになりました。
また、大人にとっても便利な家電が続々と登場しており、子どもたちが家事の手伝いで体を動かす機会もぐっと減っています。
共働きの家庭が一般的になり、両親ともに夜遅くまで就寝できないケースも増えています。
親の不規則な生活スタイルは、子どもにも影響を与えます。早寝早起きのリズムが崩れ、夜ふかしや寝不足が続くと、成長ホルモンの分泌が減って筋肉の発達を妨げてしまいます。
*
こうした原因が重なることで、幼児の運動能力が全体的に低下していると思われます。
文部科学省「幼児期運動指針」(平成24年3月)によれば、幼児期(3〜6歳)は、生涯にわたって必要となる「多様な動き」の基礎を獲得する、非常に重要な時期です。
運動にかかわる神経伝達システムは、5〜6歳までに大人の約8割程度にまで発達すると言われています。
つまり、幼児期に「走る、跳ぶ、転がる、ぶら下がる」といった基礎的な動作をどれくらい経験したかによって、その後の人生における運動能力が変わってくる、ということです。
では、この問題の改善に向けて、保育士や保育施設はどんな工夫を心がけたら良いのでしょうか?
日本スポーツ協会による「子どもの身体活動ガイドライン」の中では、子どもに最低限必要とされる身体活動量は「1日60分以上」と定められています。
この「1日60分」というのは、スポーツをする時間だけでなく、体を動かす遊びや階段の上り下り、掃除の手伝いなど、日常生活における活動の全てを含むものです。
この基準に照らし、保育園や幼稚園でも、いろいろな形で体を動かす遊びを取り入れていく工夫を行うのが好ましいでしょう。
たとえば、園庭での遊びや園外への散歩など。また、屋内でもダンスやリトミック、マット運動など、多様な遊びで体を動かすことができます。
子どもたちに運動を促す際には、「楽しみながらできるかどうか」も重要な視点です。というのも、幼児期に「体を動かすことは楽しい」という感覚を経験することで、生涯にわたり運動への抵抗感を減らせるためです。
大切なのは、無理に上達を強いるのではなく、子どもたち一人ひとりの発達に合った運動を取り入れること。
また、運動が苦手な子でも楽しめるように工夫をこらすこと。
そして、大人も一緒に楽しむことです。
生涯にわたり影響を与える「幼児期の運動能力」。低下を防ぐ工夫を、できることから始めていきましょう。